在仙ライター生きていく日記

「きれいごと」と言われても。

潜入

9月15日、日暮れの早さに秋を感じる仙台です。

晴れていても、景色の濃淡は夏のそれとは

随分と変わってきましたね。

 

取材先に出向く前、繁華街から少し外れた一角に、

今まで認識していなかった喫茶店を見つけました。

店構えからして結構な老舗のようでしたが、

あまり歩かない道沿いで、気づかなかったようです。

 

約束の時間まで余裕があったので入ってみると、

60代くらいの女性が切り盛りしているお店でした。

先客はおらず、静かな店内と広いテーブルは作業に最適。

たださすがにパソコンをカタカタするのは気が引けたので、

ノートや資料だけでできる取材の下準備を進めました。

 

ゆったりとした時間を過ごせるかと思ったのも束の間、

店にやって来たのは近所にお住まいらしい常連さん。

近隣の解体工事の騒音や迷惑駐車の愚痴から始まって、

いかにも常連客らしい話に花を咲かせ始めます。

 

独特な抑揚を伴う、

ナチュラルな仙台弁で展開する近所の噂話は

次々と登場人物が入れ替わります。

さすが中心部に近い立地ということもあって、

周辺の不動産や開発案件に関わる情報も挟まり、

郊外暮らしの余所者である私からすると、

噂話はとてもドラマチックなものでした。

 

が、手元の作業よりも会話に耳を傾ける方の

ウエイトが上回ってしまったので、

予定よりも早めに店を出ました。

 

さて、私が出ていった後、

「何だか若ぇ人来てたども、誰だぃね?」

「さぁ。学生さんでねぇの?」

といった流れにでもなったでしょうか。

 

作業に向いているかどうかはさて置き、

濃厚な地域コミュニティのど真ん中に

(同じ市内なのに)完全な部外者として

無言で潜入する感覚は面白いものです。

 

通算20年以上暮らして、ともすると「知った気」になる

仙台の街ですが、まだまだ未知の世界が広がっていると

実感させられる、ひと時の「余所者」体験でした。

 

多分、またお邪魔します。